


・労働時間・割増賃金不払の改善には、予期せぬ多大なコストがかかってしまう。 ex 過去に遡って未払い賃金を支払う ⇒ 中小企業でも、一時に、数百万〜数千万円の資金負担を伴う ex 今後、適正に時間管理・賃金計算を行っていく ⇒ 一気に、人件費コストが上昇する 事業継続が不可能となる深刻なケースも多い |
※是正勧告に従わないとどうなるのか・・・・
・是正勧告書は、労働基準監督官が法違反に該当すると考えた事項を記入して、あくまで是正を勧告
するために交付する文書である。(事業主の自主的な是正措置を期待するもの)
・事業主側があくまで「法違反ではない」と突っぱねた場合、労働基準監督官は法違反として捜査の
上、送検し、検察庁や裁判所の判断に委ねられることになる(労基法第101、102条 労働基準監督
官は法違反について捜査権を有する)
・罰則はあくまで労働基準法において適用されるものであり、たとえば、「割増賃金不払」の場合は
罰金30万円に処せられるが、これを支払ったとしても、私法上の債務不履行を免れるものではない
(つまり、不払と認定された割増賃金は支払いを命じられるということプラス付加金の場合も)。
※是正勧告に対する実務対応の留意点
・是正勧告(法違反)なのか指導なのか。指導とは、必ずしも明確な法違反ではないものを含めて
改善を図らせる必要があると判断したときにその事項を改善すべきと指導票が交付される。
・@定期監査 A労働者の申告 B司法手続きとしての告訴(告発)なのか十分に認識して対応
する必要がある。

・労基法違反の問題も重要だが、賃金債務不履行の問題の方がさらに重要とも言える。
・是正勧告通りに対応できればよいが、資金不足等で遡及分の支払いができない場合に、
どう対応するかがポイントとなる
・重要なことは、まず「将来に向かってきちんとした改善が行われること」である。
・是正勧告を受けたからといって検挙されたわけではなく、まずはあわてずに、指導に従って
今後改善するという気持ちで臨む
・表面的に体裁を整えたり、虚偽の報告をしない
会社の管理体制を整える良いきっかけにするという姿勢が求められる
・期日内にできることとできないことを分ける
是正勧告書では期日を指定されて改善を求められるが、一から労務管理基盤を整え直すことが
必要なケースもある。期日内にできそうもない事項は、いつごろまでに行うかを申し出る。
・是正報告には証拠書類・参考資料を添付する
たとえば、従業員との話合いの記録や同意書などを作成し、監督官にそれらを示すことで、
改善に前向きに取り組んでいるという心証を与えることができる
・再監督、追加調査に対応できるようにする
実際に未払賃金の遡及分を、どの労働者に、いつ、いくらずつ支払ったか、その計算の根拠資料
なども用意し、いつ、再調査、再監督されても不備のないようにしておく
○ タイムカード打刻記載どおりに請求される? → 支払わなければならない?
・残業代支払義務の根拠となるべき具体的事実の特定が大事な視点である。
そもそも支払い義務とは裁判例で「時間外労働賃金は管理者が時間外労働を命じた場合か、
黙示的にその命令があったものとみなされる場合で、かつ管理者の指揮命令下において、
その命じ通り時間外労働がなされたときにのみ支払われるべきものである。」
具体的事実の特定とは、下記の9項目を検証する。
(1) | 実際の残業の指示を誰が |
(2) | どんな立場で |
(3) | いつ |
(4) | どのようになされたか |
(5) | この時間帯に従業員は何をやっていたか |
(6) | 残業申請のための所定の手続きをしたか |
(7) | 具体的指示内容は |
(8) | その後残業代の支払い請求をしたか |
(9) | 会社は支払いを拒絶したか |